もう1か月もしたら二次試験の筆記試験が行われます。皆さん対策は万全でしょうか。令和元年度の試験より必須科目が論文形式になり、評価項目には技術者倫理と明確に記載があります。
技術者倫理について理解を深めることは試験勉強にもつながります。正直キーワードを覚えるよりも、このコンピテンシーをどのように論文に落とし込むか、という点はかなり頭を悩ますのではないかと思います。私も最後まで悩みました。よって今回は技術者倫理について記事にしてみます。
技術者倫理とは
技術者倫理の説明は技術士会の資料をそのまま引用させていただきます。
技術者倫理
・業務遂行にあたり、公衆の安全、健康及び福利を最優先に考慮した上で、社会、文化及び環境に対する影響を予見し、地球環境の保全等、次世代にわたる社会の持続性の確保に努め、技術士としての使命、社会的地位及び職責を自覚し、倫理的に行動すること。
・業務履行上、関係法令等の制度が求めている事項を遵守すること。
・業務履行上行う決定に際して、自らの業務及び責任の範囲を明確にし、これらの責任を負うこと。
技術士は技術者倫理を有していることを求められています。
以前指導技術士の方からこんな質問をされたことがあります。
科学者と技術者の違いはわかりますか?
・・・前者は科学について研究する者、後者は科学を応用する者です
間違っていませんが、それでは不十分です。技術士なら、技術者は倫理的行動に基づいて科学を応用するものと答える必要があります
なぜ技術者にだけ倫理的行動が必要なのですか?
科学技術は善悪どちらにも応用出来てしまいます。例えば科学技術を応用して兵器を生み出した技術者は、倫理的な行動が出来ていないと言えます
つまり、技術を応用し社会に貢献することが技術士に求められるのです。 技術士法第45条の2にもある公益の確保の責務が一番重要であると認識する必要があります。例えば、口頭試験において「技術者倫理の何を一番重要視しますか?」の答えは公益の確保となります。
技術者倫理と必須Ⅰ
技術者倫理は技術士にとって必要なコンピテンシーです。筆記試験の必須Ⅰにおいて、評価基準にもなっています。例えば昨年の機械部門の必須Ⅰ-2はSDGsに関する問題でしたが、(4)で「業務遂行において必要な要件を機械技術者としての倫理の観点から述べよ」とあります。ここでいかに倫理的な回答が出来るか?がポイントになります。
私の場合は、(3)でリスク対策として品質機能展開(以下QFD)により品質やコストへの偏りを無くし、全体最適化を図ると回答したうえで、(4)では環境負荷低減のためにQFDの品質特性展開表に環境負荷低減の評価項目を追加し、重点を置いた設計を行う。そしてライフサイクルアセスメント(以下LCA)により設計した製品の環境負荷を評価し、改善に努める。と回答しています。LCAについてはISO14040~14043において規格化されていますので確認してみてください。
技術者倫理の中でも公益の確保をメインに解答する場合、環境負荷低減に関する項目を心掛ける。また令和2年度以降は新型コロナウイルス感染予防対策を盛り込むと良いかと思います。
最後に
必須Ⅰは必ず技術者倫理に関する解答を求められるとおもいますので、どんな問題が来ても自分の考える技術者倫理、公益の確保を用意しておけば、スムーズに解答できると思います。ある意味得点が稼げる問題であるといえます。そして、技術士二次試験は必須Ⅰの判定がB以下で不合格です。選択Ⅱ,Ⅲのように、他で挽回出来ません。よって試験対策としても技術者倫理を押さえておくのはとても重要なことなのです。
そしてさらに重要なこととして、技術士試験はすでに技術士であるという意識で臨む必要があります。倫理的な行動を日頃から心がけることで、試験においても自然と倫理的な解答が出てくると思います。