30代技術士の成長記録

令和元年度技術士二次試験に合格した30代技術士(機械部門)の成長記録です

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【機械設計技術者向け】材料知識を身につけて設計効率アップ その④

 次回に続いて機械設計者にとって大変重要な材料知識について記事にします。今回は4回目です。材料の加工方法と材料の関係性などを纏めました。ぜひ最後まで目を通して頂き、ご自身の業務に役立てていただけたら幸いです。

 

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 その①~③は以下のリンクより確認ください。
chuckmechanicalpe.com

 

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材料の加工方法と特徴

 材料には加工方法との相性が存在します。それにより加工できる形状が決まってきてしまいます。厳密には、あらゆる方法を駆使すればその壁を越えられますが、QCDの観点から現実的ではありません。よって、材料の選定においては加工方法をまず知り、どのような加工方法が適切か?を理解する必要があります。加工方法はよく考えれば機械的性質に依存しているため、材料の性質を理解することである程度予測は出来ます。そのために今回に至るまで材料自体の説明をしてきました。

 それではまず代表的な加工方法について見ていきます。一つ一つの説明については割愛しますので、詳細を知りたい場合は、参考書や別の解説ページをご確認ください。

加工方法

切削加工・・・旋削、フライス削り、レーザー加工、穴・ねじあけ、歯切り、ブローチ削りなど

研削加工・・・研削、ホーニング仕上げ、調子あげ、ラップ仕上げ、バレル仕上げなど

溶融加工・・・鋳造、溶接

塑性加工・・・圧延加工、押し出し加工、引き抜き加工、鍛造、打ち抜き加工、曲げ加工、せん断加工、絞り加工

 

加工方法によってメリットデメリットが存在します。例えば塑性加工は加工時間が短い、量産向き、安価などのメリットがありますが、精度が切削加工に劣るなどのデメリットがあります。

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加工方法と材料の関係性 

次に上記加工方法と材料の関係性を見ていきます。

切削加工

 切削加工は除去加工ともいいます。基本的には刃物のついた工作機械で金属表面を削ります。硬い金属を高速で削るため、刃具にもそれなりの硬さや耐熱性、耐摩耗性が必要です。つまり刃具の材料には加工材料に負けない機械的性質を付与する必要があるのです。しかし、そのような刃具は高価なものになりますし、消耗を抑えるために送りを遅くするなどして結果的にコストが高くなります。よって、なるべく切削性の良い材料を選びましょう

 例えばステンレス鋼の中でもSUS304はもっとも一般的な材料といえますが、切削加工には向いていません。材料の特徴として硬く粘性があり、また熱伝導率が低く、熱膨張係数が高いなど加工に向いていない材料です。どうしてもステンレス鋼を切削加工したいのであれば、快削ステンレス鋼SUS303を指定しましょう。ステンレス鋼の特徴をもったまま、加工性を向上させています。有害成分であるリンと硫黄が含まれています。SUS304に比べ耐食性に劣るため、使用環境に応じて使い分けましょう。

 逆に切削性の良い材料は炭素鋼、鋳鉄、アルミニウム合金です。炭素鋼は炭素含有量によって加工性が変わりますが、0.4%あたりが最も良好とされています。アルミニウム合金は鉄鋼材料と比べてやわらかい素材であるため、削りやすい方です。しかし、切削性の良い材料にもデメリットはあります。例えば、構成刃先の出来やすさで言うと、やわらかい材料の方がやはり発生頻度が高いといえます。構成刃先により、仕上げ面・寸法精度の悪化などが懸念されます。

 

研削加工

 研削加工は主に切削加工後の仕上げに用いられます。砥石車を高速回転させ、対象物にあてることで表面を少量ずつ削り、最終的に滑らかな面に仕上げることが出来ます。

  対象材料は基本的に切削加工に用いられるものではありますが、切削刃具と同様に材料によって適した砥粒を選ぶ必要があります。手工具でも、鉄鋼材料とステンレス鋼では使い分けが必要であることと同じです。

 

溶融加工

 鋳造用材料は、鉄鋼材料で言うと鋳鉄という名前で分かるように、名前で判別できます。代表的なところではFC材、FCD材などがあります。

 他にもアルミニウム合金、マグネシウム合金、銅合金などにも存在します。鋳造用は主に流動のしやすさを重視した材料になりますので、例えば鋳鉄は他の鉄鋼材料と比べ炭素量が多く融点を下げることで条件を満たします。

 しかし、炭素量を多くするということは脆くなるというデメリットもあります。また溶接には適さない材料になります。そもそも溶接を必要とする複雑な構造は鋳造で製作可能です。

 

 溶接用材料には鉄鋼材料でいうと軟鋼が良く使われます。鉄鋼材料は炭素量が0.3%を超えると溶接時の熱により熱処理効果が入り、材料が固く割れやすくなります。鉄鋼材料の中でも炭素量が最も多い鋳鉄が溶接に適さないのはこのためです。

 ステンレス鋼は線膨張係数が大きいため、溶接によりひずみや割れが発生しやすい材料です。また溶接個所の耐食性が劣化するというデメリットもありますので、使用環境によっては他材料に切り替える、表面処理を行うなどの対策が必要です。耐食性の高い材料としてはCr含有量の多いSUS304が挙げられますが、SUS304Lという極低炭素鋼は、Cr炭化物の析出によっておこる耐食性の低下を抑えられますので、場合によって使い分けても良いでしょう。

 非鉄材料のアルミニウム合金も溶接性が悪い材料です。熱伝導性が良いく溶接熱が逃げやすいためです。

 また異種材料の溶接は、材料の種類によって相性がありますので事前によく確認する必要があります。

 

塑性加工

 塑性加工には材料自体の成形方法も含まれているので、板金加工に絞って説明します。板金加工は塑性加工に分類される通り、材料を塑性変形する加工方法です。塑性変形をさせるため、比較的やわらかい材料が使用されます。鉄鋼材料では軟鋼(SPCC、SPHC)が用いられ、ステンレス鋼も相性が良いです。ステンレス鋼はオーステナイト系のSUS304は非磁性体になりますが、塑性加工した部分は加工硬化により磁性を帯びることを認識しておきましょう。

 鉄鋼材料やステンレス鋼と同じくよく使うアルミニウム合金は、板金の曲げ加工時に割れやすいことは広く知られています。この為設計時に割れにくい形状(Rを大きくする、スリットを入れるなど)を検討する必要があります。

 マグネシウム合金は比強度が高いため近年使用率が増してきている材料ですが、加工性が悪いとされています。主に鋳造で用いられることが多いですが、展伸材のMg-Al系合金AZ31であれば成形性、溶接性も向上されています。

 

最後に

 過去実際にあった話ですが、部品の出図後に加工方法で揉めて、形状や材料の変更を余儀なくされるといったことがありました。手戻りを無くすこと、つまり設計リードタイム短縮には、加工方法と材料の関係性を知ることが大変重要なのです。今回記事にした内容を理解していただくと共に、それぞれの業種においてもご自身で調べて纏めていくことが望ましいです。

 次回は材料の選定方法について記事にします。