30代技術士の成長記録

令和元年度技術士二次試験に合格した30代技術士(機械部門)の成長記録です

【技能検定】機械・プラント製図技能士1級 合格体験記

 明日はいよいよ技能検定の実技ですね。直前になって申し訳ないですが、機械・プラント製図技能士1級の合格体験記を記事にしたいと思います。勉強の参考にしていただけたら幸いです。尚、私は2DCADで受検しておりますので、手書き製図の方の参考にはならないかもしれません。予めご了承ください。

 

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受検の目的

 2級合格の段階である程度の基礎固めは出来ていますが、さらに高度な作図能力を身に着けたいと思い受検を決意しました。

 1級と2級の違いは以下の通りです。個人的には筆記試験の難易度はさほど変わらないと思ってますので割愛します。

  • 試験時間が5時間(2級よりも1時間長い)
  • 作図部品は溶接構成品(2級は鋳物)
  • 溶接記号、計算問題が実技でも出題される。

 産業機械の設計をしていると、鋳物よりも溶接品の作図機会の方が圧倒的に多いですね。2級よりもより実務に近いということで、勉強になりそうだと感じました。

勉強時間

 総勉強時間は以下の様になっています。

実技:40時間

学科:4時間

 

 学科が相変わらず少ないのは、過去問を解くまでもなく難易度が低いためですね。技術士や機械設計技術者の勉強で培った実力で勉強なしでも行けると思いますが、念のため数回分解きました。

 実技は2級の受検からさほど期間が空いていなければ、過去問5年分で合格ラインまで行けるかもしれません。それでも出来れば同じ問題を複数回練習すると良いです。その理由は後程説明します。

 また1級は経験年数次第で2級を飛ばして受検することも可能です。その場合2級で試験に慣れていない分勉強時間は余分に必要です。

 

勉強方法

 基本的には、実技と学科両方とも過去問をベースに勉強しました。実技は5年分、学科は2年分ですね。学科は過去に何度も全く同じ問題が出るため、過去問を解く勉強が有効です。実技は上記の通り職場のパソコンを使用して、CAD操作の練習から実際に過去問を時間を測って作図する練習をしました。以下に私が勉強してみて有効だと思った対策を記載します。

 上記で書いたように、業務で地力をつけた点を加味すると難易度がぼやけてしまいますので、あくまで2級合格者相当がどの様な勉強をすれば合格出来るか?という視点でお話しします。それでは実技に関してポイントを纏めてみましたので御覧下さい。

・時間配分

・JIS

・試験ルール

・CADの操作

・溶接構成品の形状把握に慣れる

・受験者が間違えやすいポイント

時間配分

 この試験は、常に時間を意識しながら製図を進める必要があります。例えば

①問題文確認  5分 ※機械設計に慣れていない方はここでもっと時間を割く必要がある

②図枠、表題欄作成  5分

③部品図のマーキング(組図から作図部品の抜出し)15分

④採寸(図面にスケールを当てて寸法を手書きで記入)25分

⑤計算問題 5分

⑥製図 外形図作成 2時間15分

⑦風船指示 5分

⑧製図 寸法、幾何公差、表面粗さ記号記入 1時間30分

⑨溶接記号入力 10分

※④~⑨は並行して進めてもOK

⑦図面チェック 5分

ここで重視すべきは③⑥です。形状把握が間違っていた場合、かなり減点が大きいと聞いたことがあります。⑤の計算問題は間違っていても大きな減点に繋がらないと聞いたことがあるため、考えてすぐ分からなければ飛ばしましょう。2級と同じく準備段階の①~④は簡単に済ませたいところ。④は後で作図したりチェックするために記入しますが、時間がない場合は測りながら作図する方法でも構わないと思います。

 そして、多くの過去問で軸などの2部品目の作図が必要な場合がありました。軸は意外と形状を間違えやすいので、練習時から時間配分をしっかり覚えて焦ってミスをしないよう心掛けたいです。

JIS

 2級合格時から時間が経っている場合は、JISの改定がないか必ず確認しましょう。そもそも設計者なら常に最新の情報をインプットしておく必要があります。

受検ルール

 問題文には課題をこなすためのルールが記載されています。どんな些細なことでもきっちり守らなければなりません。私の周りでは、そういう基本的なことが出来ていない人に限って不合格となる傾向がありました。例えば、図枠の尺度や表題欄のサイズです。尺度は、最後にプリンタで出力した際に指示通りの尺度で印刷されていれば良いのですが、A1にA2の尺度で図面を描いてしまうのはNGです。表題欄のサイズも寸法指示があるので守らなければなりません。

CADの操作

 2級から試験時間が1時間増えていますが、試験時間内にやらなければならないことはそれ以上に増えています。より効率の良いCADの操作を心掛けましょう。幾何公差や溶接記号、表面粗さ記号などは予めブロック化しておくなど、少しでも時間を短縮できるところはないか考えましょう。

溶接構成品の形状把握に慣れる

 1級の試験課題は溶接構成品です。鋳物と違い、組図から該当部品の形状を把握することが困難です。理由は、どこまでが溶接構成品なのか分かりにくいという点と、各部材の区切り位置を間違えやすい点です。

 しかしこれは2級の鋳物図面でもお伝えした通り、実践感覚に基づいた製図力が備わっていると攻略しやすいです。極めれば部品図のマーキングも必要ありませんしね。繰り返しますが、ここの対策は普段から機械の仕組みを勉強しましょうということです。

  余談ですが、溶接記号にあまり時間をかけない方が良いです。間違いや抜けがあっても減点が少ないと聞いたことがあります。

受検者が間違えやすいポイント

 私が受験者の指導をしていて間違えやすい傾向にある点をいくつか紹介します。

①三面図に相違がある

 特に面取り線が抜けていたりキー溝の平面図に間違いが多かったです。

②線種の間違い

 破線と実線を間違えただけで形状が大きく異なってしまいます。要注意です。

③表面粗さ記号抜け

 はめ合いや幾何公差部への指示が抜けています。セットで入れる癖をつけたいですね。

④部分断面図や局部断面図の指示が守れない

 断面図は問題文に右側半分を省略すること、などの指示がある場合が多く、これを守らずに全断面や右ではなく左側を省略するなどの間違いが見られました。

⑤共通データム指示が書けない

 共通データムは幾何公差のデータム記入枠へA-Bのようにデータム間にハイフンを入れてます。これが書けない人というか間違える人が意外と多かったです。普通に1枠ずつA,Bと描く人もいればCZを付ける人もいたりと様々でした。

 

注意事項

トラブルを避けるため以下の点に関しては十分注意してください。

  • 練習時から印刷した際の仕上がりを確認しておく→線種尺度が小さくないか?線が細すぎないか?文字の尺度が小さくないかなど事前に確認しておくと良いです。
  • 試験中になるべくこまめに保存する→バックアップがあるといきなりCADがフリーズした時にもリカバリーできる可能性があります。
  • 試験で渡されるUSBに保存するようにしましょう→印刷するために持ち出したのに入れ忘れた、なんてことがあったら大変です。
  • 最新のJIS規格を確認しておく→ベテラン技術者やその方からもらった古い製図便覧で勉強している方は、改定前の知識で勉強していることが多いです。
  • 1:2など尺度に応じた縮尺定規(三角スケールなど)を使う様にしてください。

 受検結果

 上記を実践して実技、学科を1回で合格しました。この試験を通して、製図力の向上が図れたと思います。難易度的には、5年目くらいまでの方に積極的に受検してもらいたい資格ですが、私の職場ではベテラン社員も多く受検していましたのですべての設計者に取得してほしい資格だと思いました。

最後に

 この試験、周りでも多くの方が複数回の受検を経験しています。理由は様々ですが、総じて勉強時間というか練習時間が足りていない印象です。1級は1回で合格する人が非常に少ない印象です。この試験は年に1回しか受験できないので、翌年また思い出すところから勉強しなおすのは時間の無駄です。他の資格にも言えることですが、余裕で合格できるという手応えになるまで、勉強や練習する癖を付けましょう。ぎりぎりで合格出来ればいいや、という意識が後に後悔を生むことになります。

 それでは明日の試験、頑張ってください。

 

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