30代技術士の成長記録

令和元年度技術士二次試験に合格した30代技術士(機械部門)の成長記録です

【技能検定】機械・プラント製図技能士2級 合格体験記

 明けましておめでとうございます。このブログを続けながら、こうして新しい年を迎えられたことを嬉しく思います。私は元旦からQC検定2級の勉強をしていました。年末年始は割と忙しく、反動で正月はダラダラ過ごしてしまいがちです。ここでいつも通り勉強出来れば、今後も続けていけるかなと個人的には思ってます。

 さて、今回は機械・プラント製図技能士2級の合格体験記を記事にします。勉強の参考にしていただけたら幸いです。尚、私は2DCADで受検しておりますので、手書き製図の方の参考にはならないかもしれません。予めご了承ください。

 

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受検の目的

 ずばり機械製図を学ぶためです。機械設計に携わる者は必然的にある分野にスキルが偏りがちです。それは上流から下流まで一貫して業務を進める機会が無いためです。特に以下のような境遇の方はあまり経験がないと思います。

  • 大企業に勤めている→業務が分業化されている。上流から下流まで様々。
  • 委託設計会社に勤めている→下流の仕事がメイン。

 私の場合は上流から下流まで一通り経験してきていますが、その分身に着けたスキルも何かに特化しているわけではありませんでした。言い方を変えると器用貧乏ですね。しかし当時の私はまだ技術士ではありませんでした。その頃から穴のない完璧な技術者を目指したいと思っていました。そこで、自分の製図知識・製図力の向上を狙ってこの資格の取得を目指しました。技術士になった今でも製図知識を身につけておいて正解だと思っています。

資格の概要は以下のサイトで確認して頂けると分かりやすいです。

機械・プラント製図技能士【試験日】合格率や難易度 | 資格の一覧 JQOS.jp

勉強時間

 総勉強時間は以下の様になっています。

実技:24時間

学科:8時間

 

こうやって見ると、機械設計技術者試験や技術士の試験に比べると圧倒的に少ないです。理由は

  1. 実技は練習環境が限られている→休日や定時後に職場で練習するしかない
  2. 実技は元々実務で基礎が出来ていた→CADの操作は元々慣れていた
  3. 学科は難易度が低い→技術士一次試験や機械設計技術者試験2級の方が圧倒的に難しい。過去問を3年分やれば合格出来る。

といった点が挙げられます。

つまり参考になるかどうかは自分の実力次第ということです。

 

勉強方法

 基本的には、実技と学科両方とも過去問をベースに勉強しました。実技は4年分、学科は3年分ですね。学科は過去に何度も全く同じ問題が出るため、過去問を解く勉強が有効です。実技は上記の通り職場のパソコンを使用して、CAD操作の練習から実際に過去問を時間を測って作図する練習をしました。以下に私が勉強してみて有効だと思った対策を記載します。

 上記で書いたように、業務で地力をつけた点を加味すると難易度がぼやけてしまいますので、あくまで初学者がどの様な勉強をすれば合格出来るか?という視点でお伝えします。それでは実技に関してポイントを纏めてみましたので御覧下さい。

・時間配分

・JIS

・試験ルール

・CADの操作

・鋳物図面に慣れる

時間配分

 この試験は、常に時間を意識しながら製図を進める必要があります。例えば

①問題文確認  5分 ※機械設計に慣れていない方はここでもっと時間を割く必要がある

②図枠、表題欄作成  5分

③部品図のマーキング(組図から作図部品の抜出し)10分

④採寸(図面にスケールを当てて寸法を手書きで記入)30分

⑤製図 外形図作成 2時間

⑥製図 寸法、幾何公差、表面粗さ記号記入 1時間

※④⑤⑥は並行して進めてもOK

⑦図面チェック 10分

ここで重視すべきは③⑤です。形状把握が間違っていた場合、かなり減点が大きいと聞いたことがあります。ここに時間が使えるよう、準備段階の①②④は簡単に済ませたいところ。④は後で作図したりチェックするために記入しますが、時間がない場合は測りながら作図する方法でも構わないと思います。

JIS

 この試験は国家資格ですのでJIS(日本産業規格)を押さえておけば問題ありません。製図便覧を持っていれば、その内容は容易に把握できます。しかし、いくら規格を押さえておけばよいといっても、JISは度々改正がありますので常に最新の情報をインプットしておく必要があります。

受検ルール

 問題文には課題をこなすためのルールが記載されています。どんな些細なことでもきっちり守らなければなりません。私の周りでは、そういう基本的なことが出来ていない人に限って不合格となる傾向がありました。例えば、図枠の尺度や表題欄のサイズです。尺度は、最後にプリンタで出力した際に指示通りの尺度で印刷されていれば良いのですが、A1にA2の尺度で図面を描いてしまうのはNGです。表題欄のサイズも寸法指示があるので守らなければなりません。

CADの操作

 合格のためには時間内に課題が完成させることが前提です。図面の良否は二の次で、まず図面が完成しているかどうかで篩に掛けられるようですね。完成まで持っていこうとすると、技能検定が始まってからあまり考えている時間はありません。しかし、CADの操作が熟練のレベルに達しているのであれば、ある程度の余裕が生まれます。つまり実力を埋めるのであれば、CAD操作はしっかり練習しておかなければなりません。

 CAD操作で必要なスキルは、線種・画層の設定、アイコンの配置やショートカットコマンドの記憶ですね。あとは如何に早くそのキーやマウスを動かすかと言ったところでしょうか。自分で言うのもなんですが、私は試験中に自分でコマンドを作成したりしてましたし、かなり工夫を凝らしていたと思います。いかに作図を効率よく進めるか?といった作戦を考えるのも勉強の内と捉えて頂きたいです。

 

 例えば試験中に一番使用するLINEコマンドを押す時間を2秒短縮すれば、1000本の線を引くとして2000秒≒33分の短縮です。

鋳物図面に慣れる

 2級の課題は、基本的に鋳物になります。まず鋳物図面の特徴を押さえましょう。

 鋳物が何かわからないという方や普通の図面とどのように違うのか?は参考書で事前に予習しましょう。よく理解しないで図面を描く人がいますが、私から言わせればそんな人は設計者ではありません。対象の部品を作るためにどのような図面に仕上げなければならないか?仕事でも考えながら描いている人は何を言っているかわかるはず。話が脱線しましたが、例えば

  • 抜き勾配を付ける
  • 隅Rを付ける
  • パーティングライン(以下PL)を意識した形状をイメージする

などでしょうか。3つ目のPLを意識するというのは、PLを境目に抜き勾配の向きが変わるためです。どのように鋳物が作られるか?が分かれば意味は分かると思います。3つ目がこの試験では結構重要です。組図から図面化しなければならない部品を読み取る必要があるからです。

 組図から部品を読み取る作業というのは機械設計初学者にとって鬼門です。何故なら機械の仕組みやその意味がよくわからない為です。例えば、ギヤボックスの組図があったとして、2組以上の歯車があり、そこには当然オイルシールや軸受け、プラグといった構成品がイメージできます。これは図面を見なくてもその機械が何をするものか説明を読めば簡単に理解できる、というのが初学者とそうでない者の違いです。2級は新入社員でも受験できるため、まだ経験の浅い技術者にとっては難易度が高いかもしれません。ここの対策は普段から機械の仕組みを勉強しましょうということです。

  

注意事項

トラブルを避けるため以下の点に関しては十分注意してください。

  • 練習時から印刷した際の仕上がりを確認しておく→線種尺度が小さくないか?線が細すぎないか?文字の尺度が小さくないかなど事前に確認しておくと良いです。
  • 試験中になるべくこまめに保存する→バックアップがあるといきなりCADがフリーズした時にもリカバリーできる可能性があります。
  • 試験で渡されるUSBに保存するようにしましょう→印刷するために持ち出したのに入れ忘れた、なんてことがあったら大変です。
  • 最新のJIS規格を確認しておく→ベテラン技術者やその方からもらった古い製図便覧で勉強している方は、改定前の知識で勉強していることが多いです。
  • 1:2など尺度に応じた縮尺定規(三角スケールなど)を使う様にしてください。

 受検結果

 上記を実践して実技、学科を1回で合格しました。この試験を通して、製図規格特に幾何公差について理解を深められました。難易度的には、2年目くらいまでの方に積極的に受検してもらいたい資格です。

最後に

 この資格は周りでも多くの方が複数回の受検を経験しています。理由は様々ですが、総じて勉強時間というか練習時間が足りていない印象です。私は普段3DCADを使用していましたが、この資格のために2DCADの練習から始めて、少しでも早く図面が描けるよう訓練しました。何回か受けていればいつか合格できると考えている方は、直ぐに改めましょう。この試験は年に1回しか受検できないので、翌年また思い出すところから勉強しなおすのは時間の無駄です。他の資格にも言えることですが、余裕で合格できるという手応えになるまで、勉強や練習する癖を付けましょう。ぎりぎりで合格出来ればいいや、という意識が後に後悔を生むことになります。

 それでは残り2週間、頑張ってください。