昨日は名古屋ものづくりワールド2020に参加してきました。機械要素技術展、航空・宇宙機器開発展、工場設備・備品展、次世代3Dプリンタ展、設計・製造ソリューション展、そして新しくものづくりAI/IoT展、計測・検査・センサ展が開催されました。
実は今回とある装置の開発のため、情報収集の意味合いもありましたので、仕事の延長線上での参加です。私は半導体関連の装置設計をしており、半導体を扱う装置では、独特な制約が多数あります。その中でも静電気の発生を抑える材料選定や導通の考え方は非常に重要です。今回静電気対策のために情報収集をしておりましたが、どこの企業も半導体関連に特化した製品が多いわけではなく、会場を回っても中々実になる情報は得られませんでした。
それはさておき、今回は私のように機械設計において静電気に関する知識を欲している方向けに、基礎的な話をしていきます。同じ業界の設計者はもちろん、それ以外の方もこれを機に静電気に関する知識を深めて頂けたら幸いです。
静電気の発生原因
静電気は主に冬場ドアノブを触ったり、服を脱ぐときにパチッと来るあれです。身近な現象で知らない人はまずいないと思いますが、何故静電気が発生するか仕組みをご存じの方はどれくらいいるでしょうか。
静電気は電子の構成が不安定になっている状態のことで、マイナス・プラスの電荷のバランスが崩れた状態ともいいます。
異なる物質同士を触れ合わせたり、摩擦させると二つの物質の間で電子の移動が生まれます。静電気が冬に発生しやすいのは、空気が乾燥しているからです。通常静電気が発生しても、空気中の水分を伝って拡散していくため夏場特に湿度の高い梅雨の時期はあまり感じられません。
半導体関連装置ではなぜ静電気が重要なのか?
半導体製造工場では、様々な工程があり、その中で半導体製品そのものやその原料に直接触れる装置も数多くあります。その際静電気が半導体に流れると半導体製品は破壊されます。静電気が流れる現象を静電気放電(Electro Static Discharge:ESD)と言ったりします。
また半導体製品は細かな塵(パーティクル)を嫌います。リソグラフィ工程で回路パターン転写の際、パーティクルが映り込んで不良品になったり、回路間にパーティクルが落ちてショートの原因になったりします。パーティクルはほとんどが静電気を帯びており、製品が帯電していると引き寄せて付着してしまいます。
半導体製品に触れる装置はいかに静電気の発生を抑えるかが重要です。静電気の発生を抑えるためには様々な方法があります。
静電気の発生を抑える方法
ESD対策製品を使う
半導体製品を搬送する方法は多岐にわたりますが、その接触部にESD対策品を使用します。例えば製品やその保護ケースなどを搬送する場合に真空吸着を行いますが、直接触れる部分に制電材料を使用した吸着パッドを使用します。制電材料としては電気抵抗値が100kΩ~1GΩのものが有効とされています。私が過去に設計した装置では、PETやPVC、PEEKの制電グレード材を使用することがあります。
静電気を除去するのに導電性材料(100kΩ未満)を選ぶ場合もありますが、厳密には導電性材料は材料間の放電を発生させるため、ESD対策には不向きです。また逆に1GΩ以上の材料は、帯電防止材料また絶縁性材料とも呼ばれますが、表面が帯電した場合、導電性材料と触れていても除電出来ないため、ESDが起こります。
イオナイザで除電する
先に説明した材料はあくまで製品に触れた際に発生するESDを防ぐことが目的ですが、イオナイザは製品自体の帯電を無くすことを目的とした装置です。
イオナイザとは静電気除去装置のことです。原理を簡単に説明すると、イオナイザ自体が放電した際に生じるイオンを製品に与えることで静電気を中和します。制電材料を使うだけではリスクは0になりませんが、イオナイザを使用することで更にリスクを減らすことが出来ます。私がイオナイザを扱う場合は、表面の静電気を100V以下にすることを除電の基準としていました。
身近なもので静電気対策をイメージする
機械設計に携わらない方にもわかりやすいような実例を用意しました。皆さんセルフのガソリンスタンドは利用されますか?私は基本はセルフを利用します。車から降りてお金を投入して油種を選びますよね。そのあと音声案内で「静電気除去シートに触れてから給油口を開けてください」と言われませんか?そのシートも同じような対策品を使ってます。人の手に帯電している静電気がシートに触れることで除去される仕組みです。シートはアースをとるようになっています。
また私の職場ではドアの部を触る前に静電気除去シートを触れることで、バチッとした痛みに襲われなくて済みます。シートのサイズが小さいと、ドアの方と先に接触してESDが発生します。