前回予告した通り、今回はものづくり白書2020年度版の解説をしていきます。
令和元年度も含め、前年度のものづくり白書を参考に問題が作られることがありますので、今回勉強するなら2019年度版です。が、試験が2ヶ月延期になったことと、新型コロナウイルスへの考え方を見るという意味で2020年版ものづくり白書も読んでおく必要があると考えています。
ものづくり白書は300ページほどありますので、全てを今から読み込むのは得策と言えません。
前回ものづくり白書の勉強方法について記事にしました。その中で総論を押さえるというのがありましたね。令和2年度のものづくり白書は、2020年度の総論までは押さえましょう。
総論の要約
忙しい方向けに、簡単に要約してみます。ここから更に自分で読み理解を深めてください。
概況
・新型コロナウイルスは我が国の製造業に影響を及ぼしている。
・感染地域は中国から米国、欧州にも広がった。経済活動の制限から我が国の経済的ダメージは深刻である。
・経済へのダメージは過去にバブル崩壊やリーマンショックに加え、東日本大震災など自然災害があり、その度乗り越えてきたが、新型コロナに関しては今まで以上の変革が求められる。
・2020年版白書は高まる不確実性への取り組みの在り方に焦点を当てて分析している。
不確実性時代の製造業の在り方
・過去のものづくり白書(2018年度)において示した課題
①人材の量的不足、抜本変化に対応できないおそれ
②従来の製造業における強みが成長や変革の足かせになるおそれ
③経済社会のデジタル化等の大きな変革期の本質的なインパクトを経営者がにんしきできていないおそれ
④非連続的な変革が必要であることを経営者が認識できていない恐れ
当時は第四次産業革命の到来を意識していた。
・上記課題やその後の環境変化を意識した戦略
①世界シェアの強み、良質なデータを生かしたニーズ特化型サービスの提供
②第四次産業革命下の重要部素材における世界シェアの獲得
③新たな時代において必要となるスキル人材の確保と組織作り
④技能のデジタル化と徹底的な省力化の実施
・上記は新型コロナウイルスに関係なく依然として当てはまる。
・しかしこのような事業環境に伴い経営者の認識は高まっている。
・2020年度は、我が国製造業が環境変化を乗り越えるための新たな在り方を模索している。
・不確実性の時代において取るべき戦略
①企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)強化の必要
企業変革力とは、不確実性がもたらす変化に対応すべく自己を変革していく能力
②企業変革力を強化するデジタルトランスフォーメーション推進の必要
ーデジタル技術は企業変革力を高める強力な武器。不確実性の時代には企業変革力の強化に結びつけられる企業が競争に生き残る。
ー統計では素直に対応できない実態が浮き彫りになり、様々な課題が明らかになっている。
③設計力強化の必要
-変化に迅速に対応するべく、製品設計・開発のリードタイム短縮が必要
-企業変革力の強化には設計力強化が重要
-デジタル技術の活用
-設計力はあまり向上していない。デジタル化による設計力の強化が急務。
④人材強化の必要
-デジタル化のボトルネックは人材の質的不足
-人材確保と育成により、付加価値創出による個々の労働生産性の向上が重要
-育成においては「数理・データサイエンス・AI」のリテラシー教育を進めるなど全国民にデジタル技術力の教育が必要。
2020年度ものづくり白書の流れとまとめ
・3章において、人材育成に資する取組、各学校段階における取組、ものづくり基盤技術や産学官連携を活用した研究開発の取組などについて現状や今後の方向性を纏めている。
・パンデミック、貿易摩擦、保護主義、地政学リスク、自然災害などの「不確実性」を克服するための戦略は、企業変革力の強化。つまりデジタル技術の活用による設計力の強化することである。
以上
まとめ
2020年版ものづくり白書のキーワードは不確実性ですね。
不確実性を克服するための施策を論文で求められるケースが考えれられます。例えば要約にもありましたが、デジタル技術の応用は喫緊の課題ですので、リモート技術が重要。その為にもIoT、5Gを活かすことを考えなければなりません。
また、途中で設計力強化の必要とあります。私は機械部門機械設計の技術士ですので、本当に共感できる内容です。この時代、変化に対応できるだけでなく、余計なコストを発生させないシステムづくりが重要です。ただでさえ感染症対策で経費がかさみますので、マイナスをいかに0に持っていくかというところも重要でしょう。
技能継承の問題はこのご時世にもついて回りますね。従来通り、ナレッジマネジメントシステムの構築なども盛り込むことも重要です。設計力の低下を防ぐには、他社に依存しないものづくりを進めなければなりません。R&Dはこの不確実性の時代には難しいと思われますが、活路を見出すためにも産学官が連携藻とる。オープンイノベーションの概念を普及させる必要がありそうです。
以上より、この不確実性を克服するための課題と方策を技術士二次試験で問われたら、私なら設計力強化にフォーカスして論文を作成します。
更に具体的な内容を知りたい場合は、後に続くページを読み込んでいく必要があります。時間がないのであれば、気になるページのみ読み込むのも一つの戦略です。ご自身の残された時間にあわせて勉強してください。
※技術士であるならば、常に最新の白書の内容を理解しておく必要がありますけどね。