30代技術士の成長記録

令和元年度技術士二次試験に合格した30代技術士(機械部門)の成長記録です

トポロジー最適化とジェネレーティブデザインの違い

  技術士二次試験のキーワードとして定番のトポロジー最適化、ジェネレーティブデザインについて中々違いを理解するのが難しいと言われることが多いです。今回はこの二つの技術について、なるべくわかりやすく解説していきます。二つの技術の違いを知りたい場合は一番下まで飛ばしてください。

 

chuckmechanicalpe.com

 

 

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トポロジー最適化とは

 構造解析を用いて不要な形状を削るための手法です。CAEソフトに実は搭載されているものもありますが、あまり普及していない印象です(少なくともCAE技術者以外では)。レベルセット法、密度分布法、均質化法などの種類があります。

 

トポロジー最適化の手順

①まずモデリングした形状から、構造上必要な部分を指定します。指定した部分を設計空間と呼びます。

②荷重条件や境界条件(固定や摩擦など)を指定し、残したい形状を決めます。

③制約条件を設定します。応力、変形量などのパラメータがあります。

④計算によって最適化された形状が生成されます。

⑤必要に応じてモデルへフィードバック、STLへ変換すれば3Dプリンタでの出力も可能です。

 

トポロジー最適化のメリット

   複雑な計算や試作などを用いないとたどり着けないような形状を、解析結果から瞬時に導き出すことが出来るため、コストダウンや軽量化などに役立ちます。また私の場合、若手にはこの手法を用いて、設計感覚を磨くことを勧めています。これは構造解析にでも似たようなことが出来るのですが、結果からどうしたらいいか?という評価が難しいという意見もあります。トポロジー最適化はこの評価の一部を補うために有効です。つまり創造力を補うことができるということです。

 しかし、トポロジー最適化はあくまで引き算しかできないので、強度的に不安がある部分の補強案などは結果に表れません。

 

トポロジー最適化の応用例

 自動車産業などでは実用化が進んでおり、軽量化などの手段の一つとなっています。また工具メーカーにおいても作業工具の形状最適化に用いるなど、今後軽くて高剛性なデザインを検討する上で重要な技術となっていくはずです。

 

ジェネレーティブデザインとは

 設計要件を定義して、無の状態から形状を生み出す手法です。様々な製造方法や材料を使ってあらゆる方面から形状生成のアプローチを行い、短時間で検討出来ます。

ジェネレーティブデザインの手順

①必要部分の形状をCADで作成します。

②必要部分の最大外形を結んだ形状を自動的に生成します。

③与えた設計要件を保つことが出来る形状を生成します。

④生成後のデータを確認します。必要に応じて結果を出力します。3Dデータとすることも可能です。

ジェネレーティブデザインのメリット

   従来の形状は、先人がデザインし広く知れ渡ったものが採用されています。製造方法や組み立て性などデザイン以外の機能性に由来することが多いのですが、そういったハードルや先入観を一旦無視することで、新しい設計案が創造できます。ジェネレーティブデザインを活かすにはアディティブマニュファクチャリングを導入することが必須です。また欲しい形状を得るには、設計要求事項の本質を理解し形状に定義できるかどうかが重要です。そういう意味では、CAE同様力学や材料、さらに加工知識が必要でしょう。

 

ジェネレーティブデザインの応用例 

  家具だと椅子などデザイン性、自動車のエンジン部品やタイヤなどで軽量化を図るために利用価値があるとされています。まだ一般的にはなっていませんが、AIによる設計の自動化が進み、いづれ無くてはならないツールのうちの一つとなるでしょう。 

トポロジー最適化とジェネレーティブデザインの違い

   トポロジー最適化が引き算であるのに対し、ジェネレーティブデザインは足し算であると言えます。ジェネレーティブデザインの方が革新的なデザインが生まれやすい反面、選択する設計者の判断力が問われます。既存部品の改善やコンセプトに自由度がない場合はトポロジー最適化、企画や初期段階の構想設計時にはジェネレーティブデザインが使いやすと考えます。

 また、トポロージ最適化と違ってジェネレーティブデザインはクラウドサービスを利用し、複数のデザインを同時に提案してくれます。これにより、完全にコンピュータに任せるのではなく、人間の勘や経験により最適な案を判断できます。

 

今後の展望

   新型コロナウイルスの影響で、設計者間や部署間のコミュニケーションが減り、また生産性を維持するといった課題を抱える技術者が多い中、コンピューターの力を借りた設計の自動化は今後増々加速していくと思われます。その中でトポロジー最適化やジェネレーティブデザインは大変価値のある技術と個人的には思います。導入に当たってコストがかかる、オペレーターが不足しているなど問題はありますが、産学官で連携し導入を進めていくことが重要だと感じます。